大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ネ)1454号・昭38年(ネ)1525号 判決

第一審原告は、右認定の贈与が第一審原告と第一審被告間の法の許容しない、いわゆる妾関係と不可分又はこれに附随するものであり、かつ第一審原告の妻を離婚しようとする不法の目的を包含するので無効である旨主張する。ところで第一審原告が上に認定したように第一審被告に本件建物を贈与し、その履行として同人にこれを引渡し居住させるに至つたのは、第一審原告がかくすることにより第一審被告をして将来に対する不安をなからしめて第一審原告から離反することを防ぎ、同人との情交関係を継続することを意図し、また第一審被告も第一審原告の右意図を受け容れたことによるものであることは、前認定の事実関係からこれを窺うに難くないところである。して見れば第一審原告は現に婚姻中の身であり、三人の子女の父親であるにも拘らず、専ら第一審被告との間の不倫の関係を維持継続するための手段として本件建物を第一審被告に贈与し、第一審被告も第一審原告に妻子があることを知り、また第一審原告の右意図を察知しながら本件建物の贈与を受けたものと謂うべく、右贈与は公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効であると謂わなければならない。しかしながらまたこれと同時に、第一審原告が右贈与の履行行為として本件建物を第一審被告に引渡したことはいわゆる不法原因給付に該当するものと謂うべく、民法第七百八条の規定の趣旨にかんがみ、第一審原告は第一審被告に対する関係では右贈与の無効を主張し、本件建物の所有権がなお自己に在ることを理由に建物の返還又は建物の明渡を請求し、又は本件建物の所有権に対する侵害を理由に損害賠償を請求することができないことも亦明かであつて、第一審原告の第一審被告に対する本訴請求は爾余の争点に対する判断を俟つまでもなく失当であると謂わなければならない。

次に第一審引受参加人が昭和三十四年五月十二日以降本件建物を第一審被告とともに使用していることは当事者間に争のないところであるが、上に説明した通り、第一審原告は第一審被告に対し本件建物の所有権がなお自己に在ることを理由にその返還を請求することができないものである以上、その反射的効果として本件建物の所有権は事実上は第一審被告に移転したことに帰属するのであるから、第一審被告が本件建物を第一審引受参加人に使用させることはその自由であり従つて第一審原告は第一審被告の処置に依拠して建物を使用する第一審引受参加人に対しても同人による本件建物の占有を不法としてこれが明渡又は損害賠償を請求することは許されないものと解すべく、第一審原告の第一審引受参加人に対する本訴請求も爾余の争点に対する判断を俟たず失当として棄却を免れない。

(毛利野 平賀 加藤)

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